THINGS I LOVE vol.27
2026.06.18feature


2007年、トム・フォードのニューヨーク店がマディソンアベニューにオープンした。僕はその開店を祝うパーティーに出席したのだが、その際、スーツをビスポークした。ビスポークなので、出来上がってくるまでに約1年ほどかかる。仕上がってくる頃までにはかなり体型も変わってしまったのだが、ここぞという時には身体と心を引き締めて着る特別なスーツであった。
でもそのうち、もっとカジュアルに軽く着られるアイテムが欲しくなり、2008年にトム・フォードのミラノ店がオープンした時にこのネイビージャケットを購入した。基本的にはトラディショナルなネイビージャケットなのだが、ラペルの大きさや大胆なシェイプはまさにトム・フォードのスタイル。メタルボタンを合わせているので、“アイビー入門”用のネイビーブレザーの如きムードも漂っている。これなら毎日羽織れる!と考えた。しかも、これなら巷によくいる“アイビー好きなトラッドおじさん”にはならず、モードな印象になると思ったのが購入の決め手だった。が、実際購入してみると、そのシェイプの激しさに慣れるまでには相当時間が必要だった。6月に購入したのに、秋までは着ることがほとんどなかった。でもせっかく軽く着られるトム・フォードを手に入れたのだから、もっと活用しない手はない。いろいろ考えて、自分なりに手を加えてみることにした。僕はたっぷりの水にブレザーを浸してから、思い切って自宅の洗濯乾燥機に投げ入れた。まずは脱水。その後、乾燥へ。10分から15分だったと思うが、途中何度か確認を繰り返し、程よい型崩れを模索した。いい具合に堅さが取れてきたあたりで乾燥機から出し、その後は陰干しに。結果、いい具合にシワシワの状態になって、期待通り着やすくなった。かれこれ20年ほど着ているが(その間、数回ドライクリーニングに出した)、良い具合である。
凹凸柄が効いたメタルの金ボタンというのも、典型的なアイビーブレザーのスクールテイストとは一線を画している。ドレスな雰囲気が気に入ってよく着ている。今回合わせたパンツは、〈PRADA〉のオフ白のコットンピケのパンツ。シャツは〈LANVIN COLLECTION〉のドレスシャツ。洗濯機で回して自然乾燥&ノーアイロンで着ている。ボルサリーノは純白のフェルト。色としては春夏だが素材感は秋冬という微妙な逸品である。ある意味、気温の変化が激しい日本の5月向きではあるかな。そしてお天気良好な日の靴は、真っ白のジャックパーセル。
さてさて、今日は先日近所を散歩していたときに見つけた、代々木上原のタコス屋さんにでも行ってみようかな。

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■祐真朋樹(@stsukezane)
1965年京都市生まれ。マガジンハウス『POPEYE』編集部でエディターとしてのキャリアをスタート。現在は雑誌のファッションページの企画・スタイリングの他、アーティストやミュージシャンの広告衣装のスタイリングを手がけている。コロナ以前は、35年以上、パリとミラノのメンズコレクションを取材していた。