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THINGS I LOVE vol.28

2026.07.09feature


 今回紹介するアイテムは、2003-2004年のAWに購入したディオール・オムのナポレオンブルゾン。ナポレオンジャケットは、パリやミラノ、ロンドン、ニューヨークなどで発表されるコレクションブランドでは、一定の周期で登場してくるのが面白い。最近もまた復活の兆しがあるように思う。

 僕が初めてナポレオンジャケットを見たのは、1981年、高校3年生の時にアルバイトをしていた婦人服店でのことだった。70年代後半のパンクブームへの反動として出てきたロキシー・ミュージックやデヴィッド・ボウイのような耽美的かつ華やかなムーブメントは「ニュー・ロマンティック」と呼ばれ、音楽のみならず、ファッションにも大きな影響を及ぼした。メイクをした中性的なミュージシャンたちのステージ衣装には僕も大きく心を動かされた。特に記憶に残っているのは、ロキシー・ミュージックのブライアン・フェリーのステージ衣装。同じ時期に、ラルフ・ローレンの広告ではナポレオンジャケットを着たモデル写真が大きな話題になっていた。高校生の僕にとっては、ナポレオンジャケットなんてステージ衣装以外の何ものでもなく、「いつ、誰が、どこで着るのだ?」というアイテムだった。が、それから20年が過ぎ、僕はパリでエディ・スリマンが発表したナポレオンブルゾンを見ることになる。その時の僕は、ひるむことなく、普通に「着てみたい」と思った。シャイニーな素材にリブ袖だったため、スカジャンを買うような感じで購入した。
 買った当時は、ディオール・オムの超スキニーなホワイトジーンズと合わせていた。靴もディオール・オムのスニーカーがお決まりでした。そして、それからまた20年が過ぎ、今、改めて着てみると、あまりにもタイトなシルエットのためフロントジップを上げるのはキツくて無理。これを普通にジップアップして着ていたのだから、若い時は痩せていたんだな〜と痛感する。インナーには『ランバン コレクション メンズ』で2024年に作ったゴダールTシャツを合わせた。スリムジーンズは2024年のバーバリーのものだ。サイドゴアブーツはトム・フォードである。

 ナポレオンジャケットには舞台衣装のような存在感がある。ファッションブランドのイベントやパーティーに着ていくとめっぽう映える。しかし、このブルゾンをこれまでに何回着たかと問われれば、その数は片手に余るほどだ。そのため、未だに新品のクオリティをキープしている。最後に着たのは、2003年か2004年に六本木ヒルズの森タワーで開催されたNYのアート本「Visionaire」のパーティーだったと思う。これを着て行ったら、スティーブン・ガン氏に「いい服着てるね」と褒められた。ガン氏はエディ・スリマンと親交が深かったので、このブルゾンがディオール・オムのものだとわかっていたと思う。その直後に彼の雑誌『VMAN』の仕事依頼があり、東京をテーマにページを作った。懐かしい。考えてみれば、服に“ナポレオン”ジャケットという名前がつくのは凄いことだ。200年も前の時代の人物の名前を冠したジャケットが、現代を生きる人にも着られているというのが面白い。日本でも「信長ジャケット」とか「龍馬コート」みたいに言えるものがあると面白いんじゃないかな。

 グラムロックやモッズなどの音楽シーンをイメージして作られたこのブルゾンは、今でもロックミュージシャンに着せれば、間違いなくさまになりそうである。思えばナポレオンの人生もまた、激しくロケンロールだったようであるし。
 もうひとつ、このナポレオンブルゾンのいいところは、ジャケットほど大げさではなくて、大リーグジャンパーのようにカジュアルに着られるところだと思う。間違いなく、エディ・スリマンが作ったディオール・オムの名作です。

 

エディ・スリマンが立ち上げた頃から変わっていないブランドのタグ。シンプルで美しい。
ナポレオンジャケットといえば、金糸をふんだんに使ったブレード装飾。こちらは宮廷服を思わせる大げさな雰囲気なれど、ジップフロントやリブの襟・袖・ウエストを活かし、スポーティーに仕上げている。
背中は装飾がなくてシンプル。エディ・スリマンのアイコンとして使われていたステッチが、両袖口から上腕あたりに入っている。
メジャーリーグのジャンパーでも着る気分で、Tシャツとジーンズに合わせてみました。

■祐真朋樹(@stsukezane
1965年京都市生まれ。マガジンハウス『POPEYE』編集部でエディターとしてのキャリアをスタート。現在は雑誌のファッションページの企画・スタイリングの他、アーティストやミュージシャンの広告衣装のスタイリングを手がけている。コロナ以前は、35年以上、パリとミラノのメンズコレクションを取材していた。

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