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THINGS I LOVE vol.29

2026.08.13feature


 1992年、僕はDOLCE&GABBANAにゾッコンの日々を送っていた。春から夏にかけては、以前このコラムでも紹介したジュートジャケットを毎日着ていた。そして、秋になっても「DOLCE&GABBANAを着まくるぞ!」と意気込んでいた。
 この年、僕は年明け早々にシチリアへ飛んで彼らの服を探したが、結局手に入らず。ミラノコレクションでは頼んでいたチケットが入手できず、ショー会場へ入ることすらできなかった。打ちひしがれた僕は、なんとショップで最新コレクション(92年春夏)を買ってとぼとぼと東京へ帰ってきたのであった。そんな苦い経験をしたにもかかわらず、実際には見ることができなかったコレクションのビデオを東京で手に入れて観てみると、「やっぱり欲しい」「着てみたい!」と思った。毎日、繰り返しビデオ映像を観るたびに、その思いは強くなっていった。

 何が僕をそうさせたのか? まずは圧倒的に美しいテーラーリングだったと思う。チャレンジングな素材選びにも感銘を受けた。加えて、袖を通して初めてわかるこのブランドの新しい着心地。これは僕にとって大きなカルチャーショックであり、時代を超越した感動だった。それまでの自分の経験や常識が吹っ飛び、新しい扉が開いたような気分だった。後にトム・フォードのGUCCIやエディ・スリマンのDIOR HOMMEを初めて見た時にも似たような感覚を経験したが、この時ほど「これを知らなかった自分はマズい」と強く感じたことはなかった。

 この年の6月に開催された1993〜94秋冬コレクションの会場にはどうにか入ることができ、ミラノでは非常に有意義な時間を過ごせた。そして、そのミラノ滞在時に手に入れたのが今回紹介するモンツァジャケットである。レザーではあるが、ハードな「革ジャン」イメージとは一線を画し、スポーティーで洗練された雰囲気に惹かれた。素材の光沢感と白と紺のコントラストが美しい。

 “モンツァジャケット”の名前の由来を調べてみると、ミラノの北東15キロに位置する街、モンツァにちなんだネーミングだそうだ。モンツァはイタリアグランプリが開催されるモンツァ・サーキットがあることで知られる街。レース期間中はフェラーリファンの熱狂に包まれる「聖地」としても有名だ。このブルゾンも、左胸や背中にチーム名でも入れれば、完璧にレーシングチームのジャケットとして使えそうである。

 当時は、HELMUT LANGのタキシードパンツを合わせて着ていたが、今回は最近手に入れたPRADAのイージーパンツを合わせてみた。インナーのTシャツとローファーもPRADAである。このブルゾンを買った92年頃はまだRAF SIMONSの存在は知らなかったので、今回のようにDOLCE&GABBANAとRAF SIMONS(現在のPRADAの共同クリエイティブ・ディレクター)を混ぜて着ることはなかったが、その後、93年〜94年頃になると、このジャケットにRAF SIMONSの「R」の刺繍がネックに入った白いタートルネックシャツを合わせることが多くなっていった。あの〈RAF SIMONS〉のタートルネックはどこへいってしまったのだろうか? ぴったりネックで首を通すのが大変だったが、圧倒的な存在感があって大のお気に入りだった。PRADAで復活させてくれるといいんだけどな〜。

 

なんとブランドの織ネームはいつの間にか外れてしまいました。確かポケットの下にあったはず。
シャイニーな皮の表情に一目惚れして衝動買い!この時代の<DOLCE&GABBANA>は実に素晴らしかった。
裾は全体的に短め。そして後ろはフロントよりもさらに少し短め。
ゆったりしたパンツに大きめのTシャツを合わせました。でもこのジャケットを買った当時は、スキニーなスラックスとストレッチTシャツで決めていました。

■祐真朋樹(@stsukezane
1965年京都市生まれ。マガジンハウス『POPEYE』編集部でエディターとしてのキャリアをスタート。現在は雑誌のファッションページの企画・スタイリングの他、アーティストやミュージシャンの広告衣装のスタイリングを手がけている。コロナ以前は、35年以上、パリとミラノのメンズコレクションを取材していた。

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