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LC JOURNAL vol.7

2026.05.14feature

“ PLAY ELEGANCE.”
LANVIN COLLECTION

LC JOURNAL

French Beauty,
Japan in the Moment

VOL.7

TOKYO,THURSDAY,May 14, 2026

大島隆之×小酒井祥悟

丁寧に愛されるエレガンス偶然の出会い

SPECIAL DIALOGUE

MAIN PHOTO

クリエイティブディレクター 大島隆之と「ランバン コレクション」に縁のある人々との対談シリーズ。今回は、ルックブックのアートディレクターを務めた小酒井祥悟さんをお迎えしました。
このルックブックにかけた想いから「ランバン コレクション」の未来、さらに最近興味が出てきたというお花のことまで。深く広くお話しいただきました。

  • 大島隆之Takayuki Oshima

    ディレクター。百貨店、セレクトショップ、コレクションブランドでキャリアを積み、国内外のファッションブランドのディレクション、VMを行う。2024年よりCuatro LLC.を設立。

  • 小酒井祥悟Syogo Kosakai

    株式会社Siun代表。雑誌やカタログなどエディトリアルデザインを軸に、近年ではコンセプト設計から、企業のVI、WEBデザインやムービーディレクションなどでも活躍。

ブランドの本質を積み上げるクリエイティブ

小酒井さんへの依頼は、即決でした大島

ルックブックのアートディレクションを小酒井さんへオファーされたのは写真家 平野太呂さんだとお伺いしていますが、改めてその経緯を教えてください

小酒井

僕のイメージでは、太呂さんはスケボーカルチャーなどストリート系の方じゃないですか。知り合ってからは時間が経っているのですが、偶然その時期に再会して、思い出してくださって繋がったのかなと思っています。ファッションにフォーカスした撮影になりそうだったので。

大島

紙(ブック)にするということが前提だったので、それならばデザインや装丁を含めて、太呂さんがやりやすい方がいいと思いますというお話をしました。そしたら即答で「小酒井くんがいいんじゃない」ということでした。

小酒井

あ、本当ですか。

大島

いただいたURLを見て、「あぁ!知ってる知ってる」と思ってご連絡しました。

小酒井

昔のWorksを持っていただいていて。

大島

何年も前のことですが、とても印象的なルックブックを他ブランドの展示会でいただいたことがありまして。このブランドすごいなと思っていたのですが、それが偶然にも小酒井さんのお仕事だったのです。なので、間接的に小酒井さんのお仕事を知っていました。

小酒井

ブランドの立ち上がりで、予算をかけていて…。どうやってインパクトを残すかとなったときに豪華なものを作っちゃおう!ということで作った本ですね。これをご存じだと知っていたので、仕様を考えるときに単なる平綴じではなく、しっかりとした製本のものがいいなと思いました。

大島さんのモノ作りと合うと思って考えました小酒井

フランス装も小酒井さんのご提案ですよね?

小酒井

届いたときに『ちょっとほかと違うな』という感じがほしいと思っていて。フランス装がいいのではとご提案しました。

大島

「ランバン」はフランスのブランドですしね。

小酒井

その関係性も少し考えました。あと丁寧なんです。最後仕上げるときに紙を1枚巻いて仕上げるので。その作り方も大島さんのモノ作りと合うのではないかと思って考えました。

大島

装丁の名前を聞いたときに「おっ!」と思って。いろいろな意味で説得力があると思いました。ブランドを作っていくということは、こういうことの積み重ねなのです。
このブックだけを紹介するコンテンツを作りたいくらい、深く作りこんだと思っています。

小酒井

このサイズ感もなかなかないですよね。最初に大島さんから、洋服をきちんと見せたいというお話があって、写真を横に並べるのか、縦に並べるのか、というところから、サイズを考えました。

大島

たくさん考えて作った後に「あ、これ郵送するよね…」ということがよくあるのですが…(笑)定形外郵便になってしまうので、封筒も含めて難易度が高いのですが、それでもなんとかしてこの形で届けたいと思って進めました。

小酒井

そのことは考えてなかったですね(笑)紙媒体をここまできちんと作る人が減っているので、貴重だと思いますし、ありがたいです。

大島

紙じゃないと出ないおもしろさや構成があります。スマホのスクロールとページをめくる作業では、出てくる画の見え方も違いますし、目の追い方も違います。良い・悪いではなく、まったく別のものではないとか。

小酒井

そうですね。用途が違いますよね。紙とWEBでは目的が違うというか。

大島

印象的だったり、ブランドの理解が深まったり、発見があるものだと信じているので、紙の媒体はあってしかるべきでおもしろいと思っています。

小酒井

WEBサイトはいつでも見られるけれど、偶然に出会えないじゃないですか。だけど印刷物は偶然の出会いがあります。例えば、20年経ってから子どもが本棚から見つけるとか。すごく貴重だなと思います。

大切にされていることは目に見える大島

「ランバン コレクション」は『PLAY ELEGANCE.』というコンセプトを掲げていますが、小酒井さんが『エレガンス』と感じられるのはどんなコト(モノ)がありますか?

小酒井

その前にひとつお聞きしてもいいですか。今回無理を言って全部フィルムで撮っていますが、みなさんはどう思われていますか?

大島

提案いただいた時点でどういう仕上がりになるか楽しみでした。いい意味で“この線だけ超えないで”というものを共有して進めています。

小酒井

紙にしても、フィルムにしても、プリミティブな部分があるじゃないですか。人工物もいいけれど、自然もいい。紙もフィルムも写真も劣化します。でもそれは悪いことではなく、いいことだよねって。そういうことがラグジュアリーやエレガンスなのではと最近感じています。新しくできた商業施設をエレガンスと言っていいのか?お金をかけて、それを追求することだけがラグジュアリーやエレンガスなのだろうか?とずっと思っていて。自分が好きなものはそうではなくて、長く続いていたり、古い街並みだったり、地に足がついている感覚。新品でピカピカではないけれど、きれいに使われていることがエレガンスだなと思います。今回のブックもずっと残るじゃないですか。10年後20年後に写真が褪せたり、まわりが黄ばんでいたり、それは作れないものだから逆にいい。そういうことが今は特に大事だと感じています。

大島

リブランディングを進める中で、『速い、大きい、強い、便利』なことはそれはそれでいいけれど『古い、遅い、めんどくさい、手間がかかる』もいいよねという話をしました。丁寧さとか、愛されている、大切にされているということは、目に見えるのかもしれないと。

小酒井

あぁ、たしかに。

本当に好きなことを探している大島

大島

雰囲気や直感は経験だと思うので、感じるところはあります。自分が好きな『日本民藝館』に行くとおじいちゃんおばあちゃんが夢中でお話しされている。人生の大先輩が目をキラキラさせて話しておられるのを見ると、自分はなにも感じていないけど、それはまだ見えていないということだと思うことがありました。それ以降は『日本民藝館』の展覧会はすべて足を運ぶようにしています。

小酒井

素晴らしいですね。

大島

そうすると、自分の好きな世界の文脈が見えてきます。それはWEBで検索しても見えてこないですし、生で感じたいなと思います。どんなものにも“何かが入っている”おもしろさがあると思っていて、ムラみたいなものにも惹かれます。ジャンルレスで本当の“好き”を探しているのかもしれないです。

小酒井

それでいうと、ここ1・2年で花が好きになってきました。歳ですかね(笑)それもあって、2回目のルックブックに花を入れたかったんです。花屋で売っている豪華なものより、その辺に生えている花がいいと思っていて。(スタイリストの)林さんが持ってきてくれた花もそんな感覚の身近に咲いていそうな花でした。それがうれしかったですね。

大島

ありますよね。通じ合ったうれしさというか。

小酒井

洋服の着こなしでもあると思います。“あざといな”みたいなこともあるじゃないですか。そうはなりたくなくて。

大島

花を好きになるきっかけは何かありましたか?

小酒井

撮影のために自分で花を選ぶようになって、そこからです。いま急に思い出したのが、20代の頃にCMの制作会社でプロダクションマネージャーをやっていた時にフラワーアーティストの東信さんと一緒に撮影でパリに行きました。花がかっこいいなと思った最初はそれかもしれません。

ブランドを選ぶ軸に、このルックブックがあれば小酒井

表紙の大胆なトリミングが印象的ですが、その狙いを教えてください

小酒井

1回目はみなさんにご提案するラフを作っていました。そのラフの延長線上で選んだのですが、2回目は林さんがスタイリングを現場の即興で合わされていて。「このスタイリング素敵だ」と思って、さらに太呂さんが撮ってくれた写真の雰囲気も好きだったので選びました。この時は1パターンしか出してないですよね?

大島

そうですね。

小酒井

これで!と。僕は写真集が好きで、その中でも表紙に写真を巻いているものが好きなのかもしれないです。それを自分で作っている気がします。もちろん、他のお仕事とは差別化していますよ(笑)

大島

提案がひとつしかないことも稀ですし、そのひとつでみんながOKを出すことも稀ですよね。

小酒井

たしかに。みなさんすぐにお返事いただきました。

大島

「そうきたか」という感じでした。前にもお話ししましたが、ディテールのアップがルックブックの表紙にくることは普通ありません。シーズンを象徴するような柄でもなく、着方を提案するものでもなく。

小酒井

このスタイリングはすごくモダンだなと思いました。撮影中にもここを撮ってほしいという話はしていて、迷いはなかったです。ファッションブランドがたくさんある中で、なぜこのブランドを選ぶのか?というときの軸に、ルックブックがなるといいなと思っています。他ではこの形やデザインはないよね?ということで印象に残っていくといいですね。

大島

この考え方の共有はブランディングをする上でも重要だと思います。携わるスタッフ全員に聞いてもらいたいくらい。

選んでいるようで選ばれている小酒井

小酒井

興味を持ってもらうためのコンテンツを考えることも大切です。デザインがかっこいいだけではなく。こんな製本があるんだ!ということでもいいと思います。

大島

「ランバン コレクション」への入口が、このルックブックでも良いですね。そして服はもちろんですが、写真や装丁などにも興味関心が広がる体験に繋がったらうれしいです。

小酒井

それは本質的なことですね。ちょっとしたきっかけではありますが、その人の生き方を左右する。「ランバン コレクション」を選ぶ人は、こんな生き方をしている人ということが別コンテンツでもあれば、よりファンがついてくるのかなと思いました。

大島

ブランドへの信用感。この考え方やクオリティなのだから、製品もいいものだろうと思っていただくこと。今はみんな忙しいので、様々な店を買いまわるのではなく、ワンストップで揃うということはサービスと思います。

小酒井

ちょっと話は変わりますが、渋谷西武がなくなりますね。文化がどんどんなくなるなと思って…。

大島

かつては様々なブランドをインキュベーションしていましたよね。

小酒井

どんどん終わっていくのが悲しいなと思います。

大島

渋谷西武で成人式のスーツとブーツを揃えたことをすごく覚えています。百貨店の名が表すようにそこに行けば、ある一定の審美眼を持ったものが揃うというところは他にないように思います。

小酒井

キュレーションされた館ということですね。いまは多様になっているので、各々の好みが違いすぎて、そのキュレーションにはまらない人が多いのかもしれません。コレはいいけどアレは違うというような。

大島

選択肢が多すぎてわからなくなってしまうという側面もあると思います。

小酒井

SNSでもおすすめがたくさん出てきますが、選んでいるようで選ばれているじゃないですか。逆に閉ざされている気がします。「これいいじゃん」ということが、急には起きなくなっている。

作られているけれど自然というところがいい小酒井

ルックブックを作る上で意識されていることはありますか

小酒井

ルックブックにおいてデザインも重要だと思いますが、スタイリングやヘアメイク、モデルのポージングなど、写真ができあがる過程をすごく大事に考えています。その中でも、スタイリングのディテールをとらえたカットや、シンプルな後ろ姿のカットが好きでした。作られているけれど自然、というところがいい。

大島

塩梅ですよね。自然体とはちょっと違って、作っているものではあって…。言葉は難しいなと思います。

小酒井

文化の異なる外国人モデルとどうコミュニケーションを取って、ムードを伝えるべきかをいつも悩みます。なるべく話すようにはしていますが…。来週2026年秋冬の撮影が決まっているので、その次はパリに行きましょうか(笑)それは冗談としても、ブランドに関わられている人はフランスのことを知っておいた方がいいですよね。

大島

知っていてやることと、知らないでやることは違いますよね。

小酒井

そうですね。実際に本物を見ているかどうか。ちょっとこれは…やはり実現したい企画になってきましたね。フランスでの撮影!

大島

そうですね…(笑)では次回!

理想の仕上がりが実現する素材を各国から選んでいます大島

インポート生地と日本の生地は、どちらが良い・悪いではなく匂いが違います。どんなに欧州ブランドの質感を真似ようとしても再現できないのは風土や歴史文化が違うからと考えています。

なにげなく活けられた花に癒される小酒井

もともとそこまで花に興味はなかったのですが、友人がサブスク花屋をはじめて。月に2回持ってきて活けてくれる。すると事務所の部屋の雰囲気がすごく変わって、水やりもするようになりました。自宅用に自分で選ぶのも好きになって、買うときもあります。