THINGS I LOVE vol.25
2026.04.16feature


この連載では、主に1990年代に僕がシビれたブランドを、購入したアイテムとともに紹介してきた。今回紹介するブランドも「気に入って買った服」という意味では同じなのだが、昔買ったものではなく、最近手元に届いたごくごく最近買った服の話である。
今回はその『DRESSEDUNDRESSED』について書いていきたい。
この『DRESSEDUNDRESSED』というブランド、スタイリストをしているのに僕はまったく存在を知らなかった。長いこと海外ブランドにばかり目を向けていたので、いわゆるドメスティックブランドに関してはあまり興味を持たないままこれまできてしまった。そしてコロナ以降は海外のコレクションにも行かなくなり、海外出張自体、なるべく避けるようにもなっていた。そんな僕に昨年の夏、インスタにDMが届いた。デザイナーの北澤武志さんからの、気持ちのこもった展示会へのお誘いだった。インスタで作品の画像などを見ると、なんか面白そうな感じ。90年代のヘルムート・ラングやジャン・コロナを彷彿とさせる服が、モノクロで撮られて並んでいた。「ほ〜。行ってみようかな」。ちょうど丸1日オフの日があったので、中目黒の展示会場に行ってみた。そこで見たのは、非常にエレガントなフォルムなのに全体のあちこちにハサミで開けたような穴が散らばっているジャケットやパンツ。これまでも黒のセットアップは星の数ほど買って着てきたが、そこに展示されていたセットアップはなんと「穴あき」だった。僕はそこに惹かれた。穴あきの服というとパンクブームの頃の服を思い出すが、このブランドの服は穴あきなのにパンクじゃない。穴あきと言っても、わざとダメージを加えたり裂いたりしてできた穴ではなく、緻密に計算されてあけられた穴なのだ。パンツなんて、穿いているとところどころ肌が穴から透けて見えたりしているので、知らない人に「ちょっとちょっと、パンツに穴、あいてますよ」とか言われそうな感じでもある。でも、多分、言われない。なぜならジャケットは長め、パンツはバギーで素材は光沢感のあるブラック。全体としてはどう見ても「ドレスとして着るためのセットアップ」だからだ。穴から見える僕のふくらはぎの皮膚に気づいて、一瞬「あらら、どっかに引っかけたのか? 教えてあげようかな」と思ったとしても、その後もう1回見て、「いや、違う。あの穴は計算してあけられている」と気づくからだ。最初は「ちょっと展示会を見るだけ見てみよう」という気持ちで向かったわけだが、会場に入って5分後には、「これをドレスアップして着てみたい」となっていたのでありました。
ところで僕は、物心ついた頃からドレスアップした格好が好きだった。いわゆる「お出かけ服」が好きで、ただ友だちと遊びに行くときも、小学校の入学式に着るような子ども用のスーツを着て行きたかった。それは大人になった今でも同じ。どんなシチュエーションでも、基本、ドレスアップしているのが好きなオッサンである。もちろん、ドレスのキメキメな雰囲気に縛られてるように見られるのは野暮だと思うので、いい具合に適当さを入れて、粋な感じのドレスアップを狙っている。これが簡単なようで結構難しく、いい具合のバランスを見つけるのには相当の年月を費やした。まあ、僕も61歳という“初老”の域に突入したので、風貌含め、やっとこなれた感じでドレスアップができるようになったかな、と思っている。にしても、姿勢の悪さはなんとかしたい。背筋だけはピンと伸びた、服を楽しんでいるオッサンになりたいと思っている。ということで、背筋を伸ばすことを心がけながら、僕はこのセットアップを派手な場所に着て行きたいと切望している。




■祐真朋樹(@stsukezane)
1965年京都市生まれ。マガジンハウス『POPEYE』編集部でエディターとしてのキャリアをスタート。現在は雑誌のファッションページの企画・スタイリングの他、アーティストやミュージシャンの広告衣装のスタイリングを手がけている。コロナ以前は、35年以上、パリとミラノのメンズコレクションを取材していた。