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LC JOURNAL vol.3

2026.03.12feature

“ PLAY ELEGANCE.”
LANVIN COLLECTION

LC JOURNAL

French Beauty,
Japan in the Moment

VOL.3

TOKYO, THURSDAY, MARCH 12, 2026

大島隆之×平野太呂

LANVIN COLLECTIONを撮る、視点の先

SPECIAL DIALOGUE

MAIN PHOTO

クリエイティブディレクター 大島隆之と、「ランバン コレクション」に縁のある人々との対談シリーズ。2回目となる今回は、ディレクターが就任した2025FWコレクションよりルックブックの撮影を手掛ける写真家 平野太呂さんをお迎えしました。
新たな撮影に入る最初の打合せは、いつも決まった馴染みの喫茶店から。そんな独特の空気感を共有するふたりの関係性。撮影現場ではあえて言葉にしなかったエピソードや、制作の舞台裏について語り合っていただきました。

  • 大島隆之Takayuki Oshima

    ディレクター。百貨店、セレクトショップ、コレクションブランドでキャリアを積み、国内外のファッションブランドのディレクション、VMを行う。2024年よりCuatro LLC.を設立。

  • 平野太呂Taro Hirano

    写真家。スケートボードカルチャーを基盤に、カルチャー誌やファッション誌などで活動。2004年~2019年オルタナティヴなスペースNO.12 GALLERY主宰。主な著書に『POOL』(リトルモア)『ボクと先輩』(晶文社)がある。

フィルムと自然光で写し出す、新しい世界観

太呂さんは、ピュアな写真を撮る人大島

ルックブックの撮影を平野太呂さんへ依頼した経緯を教えてください

大島

もともと太呂さんの写真に対して、すごくピュアな印象がありました。それは透明感とか純粋さとか、そういった感覚です。ある人が『シンプルを極めるとピュアになる』とおっしゃっていたのですが、「ランバン コレクション」でもそれを表現したいと考えたときに、太呂さんに撮ってほしいと直感的に思いました。
足さないシンプルという考え方もあると思いますが、全部足して、こねくり回して、拾って、揉んで、削って、結果、角がとれて、ということが、シンプルなのかなと思っています。
初回の打合せで、自然光でフィルムでと提案いただいたときに、思っていることの8割くらいは伝わっていると感じました。

平野

大島さんは打合せではすごく言葉にしてしゃべってくれるけど、撮影のときは何も言わないですよね。それがいつも印象的です。

大島

僕の役割はそこまでかなと思っています。コンセプトとその理由を伝えて、どう表現してもらえるかな?自分で全部できるわけじゃないので、掛け合わせが好きなのです。レストランで言えばコースメニューは考えますけど、一つひとつの料理はお願いしますというか…。

平野

ディレクターにもいろいろな人がいます。現場で最後まであがいて、もっといいものをと求めながら四苦八苦する人もいる。でもカメラマンとしては当日はスムーズな方が撮影はやりやすいです。

大島

そう言っていただけて良かったです。イメージしていることと違うことが、おもしろいなと思うときと、怖いなと感じるときはあります。が、その現場感が好きです。
先日の話ですが、ほぼ撮影終了したあとで、スタイリストの林さんが黄色い花をばぁーっとふったところを切り取った写真は、何をするんだろうと思いながら、僕にはないアイデアだなと思って見ていました。

平野

いろんな人の考えが現場にあって、みんなそれぞれアイデアを持っているしね。

大島

即興性もまたおもしろいなと思って、撮影のときは自分が1番楽しんでいる気がします。

撮影前になんとなく仕上がりが想像できた平野

今回はフィルム撮影というお話しでしたが、普段からフィルムで撮影されていますか

平野

わりとフィルムでは撮影していた方だと思います。ただ今はほぼデジタルです。今回のお話を聞いて、アートディレクターに小酒井さんをアサインしましたが、彼の作風と合うなと思いました。僕がフィルムで撮って、小酒井さんがディレクションすれば、いい世界観が生まれると考えました。その時点で撮影前ですけど、なんとなく仕上がりを想像できましたね。
大島さんから依頼いただいて、紙ですよね?と確認して。デザイナーが入るなら、撮影前からどういう仕上がりにするのか話をしておきたいとお伝えしたように記憶しています。

大島

平野さんに表現してほしい場合には、1番やりやすい方法・環境で取り組んでもらうことがいいと考えているので、どのようなチームを組むかを相談しながら進めています。

平野

僕はファッションフォトグラファーというジャンルの人ではないので、スタイリングや服に関することはスタイリストにお任せしたい気持ちがあります。でも、冊子やページものになってくると、僕も好きだし、自分でも冊子を作っていてそれなりの好みもあるので、この人とやりたいとリクエストしたこともあります。

大島

ちなみに釣りの冊子の第5号は出る予定はありますか?

平野

これは5号まで出そうと決めていて、なかなか出せていないのですが…。去年の夏は『ブルータス』で特集をやらせてもらったので、それでちょっと満足していて(笑)まだ何も動いていないです。

大島

もし5号目だけ気づいてなくて漏れていたら嫌だなと思っていて。今聞けてよかったです。

平野

最後だからどうしようかと思っていて、まだイメージが見えてきていないです。
最初はコロナのときで、やることもないし、釣りなら一人でできるし…と始まったものです。1号目を持っている人はあまりいないですよ。

大島

本当ですか?じゃあ、5号目までコンプリートしたら、何かで発表します。

平野

最後はボックスみたいなのを作れたらいいなと思っています。

なにげない写真にエレガンスを感じる大島

「ランバン コレクション」は『PLAY ELEGANCE.』をコンセプトに掲げていますが、平野さんが感じられる『エレガンス』とは何ですか?

平野

『エレガンス』について考えたことは一度もないですけど…。そういうところからは離れた人生を歩んできているので、考えてないんです、正直。
でも大島さんから『エレガンスな感じで撮ってください』とも言われていないです。

大島

今後も言わないと思います(笑)

平野

だから、僕が撮った写真を編集してまとめたときに、大島さんがエレガンスだなと判断してくれれば、それがいいかなと思います。無理に『エレガンスにしなきゃ』というプレッシャーはなくやらせてもらっています。

大島

最初はモダンなことをやろうと思っていました。そのときに“いまのモダン”とは?を考えて、最先端・トレンド・デザイン性もあると思いますが、伝統・歴史・機能美や、自然の中にもモダンはあるのではないか、という感覚は大事だと考えました。その感覚が平野さんの作品にも繋がっていると感じています。

平野

大島さんが言ってくれた言葉で、『しなやかで強い、純粋で鋭い』という言葉があります。そのイメージは持って撮影しています。それはこの撮影だけに限らず、いつでも通じるし、仕事をする上でも、作品集を作るときにも共感できるテーマとして印象に残っています。

大島

僕は『POOL』を見たときにもその感覚がありました。さらに、平野さんがインスタに投稿されている、釣りの写真にもエレガンスを感じています。

平野

あぁ、そうですか。

大島

同じiPhoneで撮って何でこんなに違うんだろうと。前は不思議に思っていましたけど(笑)それがセンスとかそういうことなのかなと。

平野

それは自分ではわからないことだから…(笑)

共感していただけるお客様が増えればいいなと大島

表紙はどのように決められていますか

平野

これを表紙で撮ろう!ということではなく、撮れた中から選んでいます。

大島

一般的にはコートとか重衣料というイメージがあります。でも、シャツで、ニットを着ないで…。これでいこうと思えるチームがおもしろいなとも感じますし、背中を押してくれるプレスはじめ、会社の判断もありがたいなと思います。それと同時に、理解が深まっている印象を受けています。

平野

この表紙の装丁は、全部はずれて1枚になるんですよね。すごいですよね。

大島

フランス装を小酒井さんから提案いただいて。すごくおもしろいと思います。

平野

初めて全部広げました。このあたりの遊びはどれくらいのお客様に伝わっているかわからないですけどね。

大島

こういったコンセプトと思いで、こういった仕様で、ということは共有しようとしています。細かな積み重ねでブランドも伝わっていくのかなと考えていますので。

平野

派手なディテールではないですが、じんわりと効いてくる気がしますね。こういうことをしていることは。

大島

デジタルは早いし、軽いし、便利なことは様々ありますが、それもいいけどこれもいいよということがあると思っています。自分がこれをもらったら、角が折れないように持って帰りたいなと思うんですけど、それに共感してくれるお客様が増えたらいいなと思っています。

バランスを大切にした1冊大島

今回のルックブックで、「これは良かったな」というカットがあれば教えてください

大島

どれも好きですが…。この後ろ姿のカットが好きですね。ここにロゴマークを入れて広告にしたイメージがすごく湧きます。
スタイリングでいうと、このオレンジがパキッとしていて、「ランバン コレクション」らしさも出ていると思います。
りんごを持っている写真は、モデルもすごくリラックスして、なじんでいて、色々ほどよい感じがして好きな写真です。

平野

僕は全体的に見ているので、この写真がうまく撮れたというものはないのですが…。植物が入っていたり、りんごを持っていたり、そういうバランスが気になります。ここにこれが入って良かったなとか。意識しながら撮っていたものが成功していると思います。前回はそういうカットはなかったので。

大島

そうですね。前回は服オンリーでした。

平野

毎回今回のようにするかと言われるとそうではありませんが…。今回はバランス感が大事だなと思っていたので、それがうまくいったところがカタログとして良かったです。

見たくなる、そそることを求めたい大島

服なのでディテールや詳細は大切ですが、雰囲気や全体像を大事にしたいなと思っています。どこから見てもピュアさがある、でもどこかに毒っけがあるという世界を作っていきたいです。

ぶれないコンセプトを自分の中に入れること平野

シーズンごとのコレクションを見ながら、コンセプトを自分の中に取り入れながらという感じですかね。スタイリストやアートディレクターと相談しながら、遊びが増えるかもしれないですし、そういうことを一緒に楽しみながら、やっていければ結果的にいいものができるのではないかと思います。