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LC JOURNAL vol.14

LC JOURNAL vol.14
“ PLAY ELEGANCE.”
LANVIN COLLECTION

LC JOURNAL

French Beauty,
Japan in the Moment

VOL.14

TOKYO,THURSDAY,November 5, 2026

大島隆之 × 清水大樹

極める姿勢が、静かに響き合う

SPECIAL DIALOGUE

MAIN PHOTO

今回のゲストは、京都・西洞院「京都和食 大むら」の店主 清水大樹さん。実直な人柄と料理の腕に魅せられ、ディレクター大島は清水さんが「祇園ろはん」の料理長時代から京都を訪れるたびにその味を楽しみに伺っています。『LC JOURNAL』では初となる、まったく別ジャンルで活躍するおふたりに、修業時代のことから、プロとして譲れないこだわりまでじっくりとお話ししていただきました。

  • 大島隆之Takayuki Oshima

    ディレクター。百貨店、セレクトショップ、コレクションブランドでキャリアを積み、国内外のファッションブランドのディレクション、VMを行う。2024年よりCuatro LLC.を設立。 https://www.instagram.com/oshima_takayuki/

  • 清水大樹Daiki Shimizu

    京都・西洞院「京都和食 大むら」店主・料理人。日本屈指の京懐石「菊乃井」で10年間の経験を積み、2020年から割烹「祇園ろはん」で料理長として腕を振るう。2026年2月、独立。 https://www.instagram.com/0203.o/

頂点を知り、自らと戦い続ける美学

“落ち着いて、凛としてやっていく”清水

まずは大島さんと「大むら」の店主 清水さんとの出会いからお聞かせください。

大島

もともと京都という街にとても興味があって、仕事の関係でも頻繁に京都に行くようになりました。どこで食事をしようかというとき、雑誌で見つけた「祇園ろはん」に伺ったのが2021年の11月です。そこで僕はすごくファンになってしまって、何度も足を運んでいます。

清水

ありがとうございます!

大島

「祇園ろはん」で初めて食べた“鰻の白焼き”に『知らない美味しさ!』という衝撃を受けました。紹介でもなんでもなく、いいなと思ったので独立されてからもお伺いしています。

清水

おひとりでお越しいただいたので、僕からカウンターごしにお声がけしました。大島さんは定期的にご来店くださるお客様ですのでよく覚えています。

大島

1シーズンに1回くらいの頻度ですが、すごく食べるし、すごく飲むので、覚えてもらいやすかったかもしれません(笑)

清水

こちらとしては、やりがいがあります。

対談のテーマとなる、大島さんが“エレガンスを感じる人”として、清水さんをご指名された理由を教えてください。

大島

少し質問とそれますが、清水さんは“エレガンス”を意識したことはありますか?

清水

その言葉そのものを考えることはないですが、料理をしているときの姿勢において『落ち着いて、凛としてやっていく』ということは日本語として近い意味かなと思います。調理場が散らかっていたり、白衣が汚れていたり、慌ただしい動作になっていたりすると、それは逆の意味になるでしょうし。

大島

前回、前々回の取材で、“きちんと”や“所作”という言葉が出てきました。今回は“凛”という言葉がエレガンスの和訳・意訳として印象的な言葉になりますね。それは元から持っていたものですか?

清水

元からは持っていないですね。「菊乃井」での経験から、その空間自体が“凛”という言葉に近い感覚で記憶に残っていたのだと思います。そこを目指すわけではないですが、学んでいいなと感じたものは自分の中に取り入れるべきだと考えています。

“自分と戦っている姿が素敵だな”大島

修業時代のことをお伺いしてもいいですか。

清水

専門学校を出てから初めての就職先では、早朝から晩まで料理のことを考えていましたね。

大島

“就職”という言葉と、“修業”という言葉を使われていますよね。他の方との対談で、食の話がよく出るのですが『味だけじゃなく、雰囲気・所作・設え』ということが出てきます。それに加えて、修業や訓練をされたからこそ出てくる強さや美しさ、所作、清い、みたいなことがあるのかなと思っています。

清水

そうですね。仕事が終わってその後が自分の時間で、包丁を研いだり技術を取り入れるために練習をします。それを仕事だと思わないからできたということはあるかもしれません。

大島

料理の世界を目指したのはいつですか?

清水

小さい頃から料理は作っていましたが、目指したのは高校生です。和食は日本で生まれたのでなじみがありますし、1番を目指すなら洋食では西洋の人には勝てないと自分自身は思いました。家族が集まって心穏やかになる食のジャンルは和食ではないかと。

大島

家族が集まって…というような思いがあるなかで、すごく研ぎ澄まされた頂点ともいえる「菊乃井」に入られたのはなぜですか?

清水

赤坂の「菊乃井」に就職しましたが、和食を選んだ理由と、お店を選んだ理由はまったく別です。学生時代の話になりますが、自分は部活動で県大会を勝ち上がれなかった経験があります。もしトップの環境にいたらどこまでできたのかなという思いがずっとありました。自分が料理をやっていくのであれば、一旦トップの環境を知るところからやってみようという考えに至りました。

大島

目指しても倍率が高かったのではないですか?

清水

倍率もですが、入ることよりも続けることの方が難しいと感じています。本当に覚悟と好きだという思いがないとできないと思います。修業の身ですから、作りたい料理が作れるわけでもないですし。

大島

厳しい環境だからこそ、京都にある多くの日本料理店の中で「菊乃井」は最高峰であり続けられるのだと。ずっと頂点にいる強さは自分も興味があります。そのお店に通い続けるということは、おいしいだけではない琴線に触れる何かがあるのだろうと常に感じます。

料理の世界に身を置いていらっしゃる清水さんが、今回のオファーを受けられた率直な感想をお伺いできますか。

清水

まずはお客様に声をかけていただいたことについて、ありがたいなという気持ちがありました。同時に仕事のジャンルも違いますし、対談の内容も料理ではないことはわかっていたので、不思議だなという気持ちも強かったです。

大島

『なんで?』という不思議さの返答について、最初の“エレガンス”に戻ると、完成されている美しさもあると思いますが、僕は鍛錬されているさま、「祇園ろはん」から今に至るまでの清水さんのひたむきな姿に美しさを感じていました。自分と戦っている姿が素敵だなと。

“中途半端なことをしているとダメになると思う”清水

伝統と新しさのバランスについて、お客様の意識や時代に合わせえて変えようと意識されていることはありますか?

清水

何か新しいことを取り入れるということは他店もやっていることで、そうなると今まであったものがなくなっていく。けれど和食自体が文化遺産であり、伝統である。そこへ食事に行くのはどういうことかを考えています。いまは予約の取れない店になったら一流店と認められるという風潮が強いですが、目指すところはそうではなく、ご家族の大事な場面で行きたい料理屋さんになれることがベースにあります。この落ち着いたエリアで、ご近所さんも含めてご家族の特別な日や、京都を訪れたときに寄りたいと思ってもらえる店であり続けることが大事なポイントだと思っています。行きたいと思ってくださる方が行けないお店では意味がないので。

大島

バランスが難しいですよね。

清水

難しいですね。お客様をお断りするのも良くないですし。

大島

お店の印象と、居合わせたお客様の印象がリンクすることもありますよね。先ほどのお話しで出た、特別な日に沿えるかどうか。様々な要素があるので、自分できちんと設計していかないと難しい時代ですね。

清水

中途半端なことをしているとダメになると思いますね。

大島

「ランバン コレクション」は日本で販売しているブランドなので、製品に落とし込んだ時に今の日本の気候に適しているか?を考えています。高温多湿、ゲリラ豪雨、寒暖差。こういうことに対してフィットすることに取り組んでいます。環境に適応することが大切かなと。

清水

料理でいうと、今後海産資源は減ってしまう。出汁のベースとなる昆布が獲れなくなったときに、次の出汁を考えないといけない。鶏肉やドライトマト、椎茸で旨みを補わなければならない。実際にまだお店では出していないですが、いろいろトライアルはしています。そうすると食べ手の方々にも順応してもらう必要がある。同じ味にはならないけれど、そこを共感してもらえるように食文化として残していくことを考えたいですね。

“自分がおいしいと思わない料理は出さない”清水

仕事において、譲れないこだわりはありますか?

清水

お客様に嫌な思いをさせないということが1番です。例えば常連様だけのお相手をすることはしないとか、シンプルなことですが。料理に関しては、誰かにいい評価をもらっても自分がおいしいと思わない料理は出さないです。

大島

すごくかっこいいお話ですね。

清水

評価をいただくことは嬉しいですが、自分がおいしいと思った料理への共感が1番の喜びであり、やりがいです。

大島

自分のおいしいには好みがあると思います。好み以外の食べてきた経験値で、意識的に舌の精度は鍛えられますか?

清水

洋食を食べに行ったりして、ソースの複雑な味には何が入っているのか、味付けのことを考えることはします。ただそれで舌の精度があがるかというと、それはないと思います。

大島

清水さんのかっこいい話のあとに自分のこだわりを話すのは難しいですが…。仕事をする上で、どなたと関わるときでも『誠実に、できることなら平等に』と思って取り組んでいます。先ほどの接客のお話しともつながるかもしれません。

“なんかいいよね、と褒められるのがいい”大島

この器にこの料理を盛り付けるギャップがおもしろいと感じると、うちでやるなら…と考えるクセがあります。時計やシューズの単品ももちろん楽しいのですが、ファッションは組み合わせの妙だと思っているので、難しいと楽しいが同居していますね。なんかいいよね、と褒められ塩梅がいいなと思います。

“いまは日々、考えることがとても多いです”清水

休日はできるだけ料理のことは考えないように、京都の北の方へ行って温泉でゆっくりしています。どうしても食事の時間は料理のことを考えてしまいます。特にいまはこの店をオープンしたばかりということもあり、考えないようにしても切り替えが難しい。不定休なので、出かける計画を立てて切り替えています。

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