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THINGS I LOVE vol.31


 90年代の後半に〈GUCCI〉のリブランドを成功させたトム・フォード。1999年にはそのグッチグループがSAINT LAURENT RIVE GAUCHEとビューティラインを買収し、2000年にはトム・フォードが〈Yves Saint Laurent〉のクリエイティブディレクターに就任。リブランドに着手することとなった。当時はミラノやパリのコレクションを観に行くと、どこへ行ってもその話題で持ちきりだった。ミラノで大成功した〈GUCCI〉の復活劇が、今度はパリで〈SAINT LAURENT〉復活劇となるのか?! そんな期待感が業界中に漂っていた。僕は雑誌『BRUTUS』や『MRハイファッション』そしてTV『ファッション通信』などでトム・フォード氏へのインタビューを繰り返していたのだが、いつも自信満々で意見を述べていたトム・フォード氏の印象が、その頃には少し控えめになっていたのを覚えている。もちろん、これからのリブランドについてを熱く語るのだが、その表情には〈GUCCI〉の再生時に見せていた輝きはなかった。トム・フォードの〈SAINT LAURENT〉に対しては、パリでは冷ややかな意見が目立った。新聞やテレビでも、「アメリカ人が金にモノを言わせてパリの文化を買収する」というようなニュアンスの報道が多かった。が、それから30年近く過ぎた今、あの時のトム・フォードのリブランドがあったからこそ今があるのだと実感する。アメリカ人であるトム・フォードは、〈GUCCI〉と〈SAINT LAURENT〉を見事に復活へ導いたのは、紛うこと無き事実であろう。

 その後は2012年にエディ・スリマンが〈SAINT LAURENT〉のクリエイティブディレクターに就任し、2016年のシーズンをもってその職を辞した。僕はこのことにショックを受けたが、2018年、彼が〈CELINE〉のクリエイティブディレクターに就任したのは嬉しかった。2000年/ミレニアムを迎える時期も影響して、何か新しいことが起こるのだと期待に胸を膨らましたのである。正直、トム・フォードの〈SAINT LAURENT〉に関しては少々ネガティブな印象を持っていたりもしていたのだが、今思うと、この時期に購入した〈SAINT LAURENT〉はどれもラグジュアリーでストリート感は皆無。その後の〈サンローラン〉で購入した服よりもラグジュアリーな雰囲気を纏っている。今回紹介するコートもその時期のもので、フロントにボタンはナシ。ローブのようなデザインだ。襟の反り方や歩いたときの全体のシルエットに豪華さが漂う。トム・フォードが描いた〈SAINT LAURENT〉の世界観は、ことごとくセクシーでリッチなものだった。僕は、コートやレザーブルゾン、赤いタキシードジャケットなど、トム・フォードが〈GUCCI〉で作っていたものとは微妙に違ったアイテムを〈SAINT LAURENT〉で買っていた。もっともっと続いて欲しいと思っていたが、わずか3年でトム・フォードの〈SAINT LAURENT〉は終わってしまった。

 その後は自身のブランドを作った後、映画業界へと飛び込んで行ったトム・フォード。彼の生き方はとても魅力的である。彼の作り出した服に袖を通すと、どこからか勇気が沸いてくる。常に勇猛果敢にチャレンジし、ゴージャスかつ繊細なクリエイティブを見せてくれたトム。TOM FORD, FOREVER、と、切に思う。

トム・フォード時代を最後に使われなくなった〈Yves Saint Laurent〉や〈YSL〉のロゴ。こうして今見ると、味わい深く思える。


大きな襟が気に入っている。イヴ・サンローランのテイストが凝縮されたトム・フォード時代の〈YVES SAINT LAURENT RIVE GAUCHE〉のコート。ベルトのよれ具合に年季を感じます・・・。

内側に大きく刺繍されたYSLのロゴ。圧倒的な存在感と美しさを感じます。

襟を立てると、ネック裏にこんな仕掛けが。チンストラップではないが、襟を立てるためのストラップだと思われる。

重厚なエポーレットが印象的なのだが、フロントはボタンなしのローブ仕立て。しなやかな素材感がセクシーなシルエットを生み出します。


■祐真朋樹(@stsukezane)
1965年京都市生まれ。マガジンハウス『POPEYE』編集部でエディターとしてのキャリアをスタート。現在は雑誌のファッションページの企画・スタイリングの他、アーティストやミュージシャンの広告衣装のスタイリングを手がけている。コロナ以前は、35年以上、パリとミラノのメンズコレクションを取材していた。

[ Information ]
10月16日から10月25日までユナイテッドアローズ六本木ヒルズ店・メンズフロアで、「祐真朋樹のガレージセール」が展開されます。ご興味のある方はぜひ覗きに来てください。

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